理論値で最大6.9Gbpsの通信速度を実現する規格「IEEE802.11ac」が登場したことにより、無線LANはまさに超高速無線通信の時代に突入しました。それに伴い、多くの企業ではIEEE802.11acに対応する無線LANに移行しているものの、導入前と比べて社内ネットワークの無線通信速度は遅いままという課題を抱えています。

これにはいくつか原因が考えられ、そのひとつがスイッチや有線ケーブルといった、無線LANにつながる「有線LANの規格」が高速通信に対応していないことです。ここでは、既存の有線ケーブルのまま社内ネットワークを高速化できる技術「mGig」、この技術に対応したCiscoのスイッチ「Catalyst 3560-CXシリーズ」の特徴をご紹介します。

IEEE802.11acの課題。スイッチのキャパシティ不足

技術の進歩に市場が追いつかないことは珍しくなく、IEEE802.11acも同様の課題を抱えています。では、なぜ無線LANを移行しても社内ネットワークは遅いままなのでしょうか。

インターネットの通信速度は10Gbpsの時代に

日本におけるインターネットの歴史を紐解くと、1990年代当初の通信速度は30Kpbs程度しかなく、動画どころか画像の読み込みでさえ時間がかかっていました。そこからわずか10年で最大1Gbpsの光回線が主流になります。今ではその10倍の通信速度を実現できる新しい規格「10GBASE-T(10Gbps)」が登場しています。

無線通信も「IEEE802.11ac」で10Gbpsに対応

有線LANや無線LANといった通信設備は、インターネットの通信速度に合わせて技術を進歩させてきました。インターネットが登場した当初は30Kbpsの速度に、光回線が開始されたときには1Gbpsに対応してきたわけです。そして、10GBASE-Tが登場した現在、無線LANには10Gbpsの規格「IEEE802.11ac(理論値で最大6.9Gbps)」が存在しています。

スイッチや有線が高速規格に対応していない

IEEE802.11acの登場により無線LANを移行する企業が増えたわけですが、社内ネットワークの通信速度は導入前と比べて遅いままという不満が報告されています。

主な原因としては、ネットワーク間の接続切替をする「スイッチ」、機器間を接続する「有線ケーブル」のような有線LANの設備の多くが現在主流とされる1Gbpsまでにしか対応しておらず、IEEE802.11acの高速規格の強みを生かせていないためです。

これはスイッチや有線ケーブルを高速規格のものに移行すれば解決できます。しかし、社内すべての有線ケーブルを敷設しなおすには多額のコストが掛かります。従来のスイッチでは、PoE(有線ケーブルによる給電技術)に非対応なことも多いため電源の課題もあるわけです。

キャパシティ不足を解決するCiscoのmGigとは

通信設備

有線LANが高速規格に非対応のままでは、IEEE802.11acの強みを生かせません。この課題を解決するのがシスコシステムズの革新的なスイッチ技術「mGig(マルチギガビット)」です。

カテゴリ5eケーブルでも5Gbpsをサポート

現在、幅広く普及している有線ケーブル」「カテゴリ5e/6」で、対応する通信速度は最大1Gbpsです。本来であればIEEE802.11acの最大6.9Gbpsには及ばないのですが、CiscoのmGigではカテゴリ5eや6の有線ケーブルでも100Mbps、1Gbps、2.5Gbpsから5Gbpsなどもサポートできるため、ケーブルそのままに通信速度の引上げが可能です。

5e、6、6aなど様々なケーブルタイプに対応

カテゴリ5eや6をサポートしていることからも分かるように、mGigではカテゴリ5eや6、6aなど多様な規格の有線ケーブルに対応しています。IEEE802.11acの無線LANに移行するために、わざわざ有線ケーブルを新しく敷設する必要はなく、mGigであればそのままの設備で社内ネットワークを超高速無線通信に切り替えられるのです。

PoE、PoE+、UPOEからの電源供給が可能

従来のスイッチを新しくする際、電源をどう確保するかという課題があるわけですが、mGigではPoEやPoE+、UPOEなど有線ケーブルからの電気供給が可能です。無線での社内ネットワーク構築には、各所に配置する無線LANの電源確保が必要となるものの、mGigのように有線ケーブルから供給できれば電源不足の心配はありません。

有線ケーブルの種類によって通信速度は変わる

mGigにより従来の有線ケーブルのまま社内ネットワークを高速化できるとのことですが、具体的にどれくらいの通信速度になるのでしょうか。有線ケーブルの種類ごとに比較してみました。

カテゴリの数字が大きいほど通信速度は速くなる

有線ケーブルにはカテゴリ5eや6、6aなど規格ごとに数字が割り振られており、それぞれ数字が大きくなるほど通信速度は速く、周波数は広くなっています。

u30abu30c6u30b4u30eau901au4fe1u901fu5ea6u5468u6ce2u6570
5e1Gbps100MHz
61Gbps250MHz
6a10Gbps500MHz

上記の表から分かるように、カテゴリ5eと6はともに通信速度は同じですが、周波数が異なります。周波数は情報量の多さを表しているので、カテゴリ5eと6では一度に運べる情報量に2倍の差があります。カテゴリ5eよりも6は快適なネットワーク環境を構築できるわけです。

mGigにおける通信速度とケーブルの速度比較

本来、有線ケーブルにはカテゴリごとの通信速度があり、カテゴリ5eや6で1Gbps以上の速度は出せません。しかし、シスコのmGigでは2.5Gbpsや5Gbpsなどもサポートしています。

u30abu30c6u30b4u30ea1Gbps2.5Gbps5Gbps10Gbps
5eu25cfu25cfu25cf-
6u25cfu25cfu25cfu25cfuff0855muff09
6au25cfu25cfu25cfu25cf

上記の表は、mGigで有線ケーブルの通信速度がどうなるのか比較したもので、カテゴリ5eでは最大5Gbps、6と6aでは最大10Gbpsにまで対応できることが分かります。たとえカテゴリ5eや6であっても、mGigであればIEEE802.11acの強みを生かせるのです。

mGig対応のスイッチ「Catalyst 3560-CXシリーズ」

CiscoではすでにmGig対応のスイッチをリリースしています。複数の種類があるので、ここではCatalyst 3560-CXシリーズの「WS-C3560CX-8XPD-S」をご紹介しましょう。

製品の紹介

Catalyst 3560-CXシリーズはmGig対応のスイッチでもコンパクト設計、多彩なマウントオプションによって設置場所を限定されないのが魅力です。それでいてPoEやPoE+での電力供給ができ、スイッチ休止モードのような省エネ性能も備えています。

また、管理ツール上からネットワーク構成や機能を制御できる「SDN(ソフトウェア定義型ネットワーキング)」や、周辺機器を接続した際に自動で検出と設定ができる「PnP(ネットワーク プラグアンドプレイ)」に対応しており設定や管理が簡単です。

さらに、「WS-C3560CX-8XPD-S」にはCatalyst 3560-CXシリーズで唯一、mGig対応のポート(差込口)が2口あり、より広範囲で通信速度の高速化が期待できます。

買い換えるメリット

WS-C3560CX-8XPD-Sの特徴からすでに魅力が見えたかと思いますが、やはり1番のメリットはカテゴリ5eや6の有線ケーブルのまま最大10Gbpsの通信速度に対応できることです。IEEE802.11acの超高速無線通信の強みを生かすことができます。

従来の有線ケーブルをそのまま活用でき、大掛かりな設備投資が必要ないのもメリットでしょう。本来、ケーブルの敷設工事には数万円から数百万円かかることもあるので、そのコストを抑えられるのなら既存のスイッチから買い換えるハードルも低くなります。

また、WS-C3560CX-8XPD-Sにはネットワーク認証やアクセス制御、セキュリティ・ポリシー・コントローラとしての機能をもつ「Cisco TrustSec」が統合されており、従来のスイッチと比較してより高度なセキュリティを維持できるのもメリットです。

■WS-C3560CX-8XPD-S 製品情報まとめ

  1. コンパクト設計で設置場所を選ばない
  2. SDNやPnPにより設定や管理がしやすい
  3. mGig対応のポートが2口ある
  4. Cisco TrustSecでセキュリティを強化できる

WS-C3560CX-8XPD-Sの中古製品ページはこちら
WS-C3560CX-8XPD-Sのレンタルはこちら

mGig対応機器の導入でコストを抑えて高速通信を実現できる

ここでは、無線LANによる社内ネットワークが遅い原因として、スイッチや有線ケーブルなど有線LANのもつ課題。そして、mGig対応のスイッチがひとつの解決策になることに触れてきました。

ここがポイント

  • 無線LANをIEEE802.11acにしても、従来の有線LANでは遅いまま
  • mGigなら有線ケーブルそのままに、最大10Gbpsまでサポートできる
  • mGigではケーブルの移行が不要で、設備投資も最小限に抑えられる

ちなみに、CiscoのmGig対応スイッチには、Catalyst 3560-CXシリーズ以外にも規模や機能ごとに多数のシリーズが販売されています。IEEE802.11acに対応させたにも関わらず、社内ネットワークが遅いと感じた際には、mGig対応スイッチに買い換えることをぜひ検討してみてください。